多焦点眼内レンズによる白内障治療 CATARACT TREATMENT WITH MULTIFOCAL INTRAOCULAR LENS

白内障とはWHAT

目の中のピントを合わせるためのレンズ(水晶体)が、加齢やさまざまな影響で混濁してくることを白内障といいます。水晶体が濁ってくると、まぶしい・ものがかすむ・みえにくいなどの症状が出現し、進行すると人工の水晶体(眼内レンズ)に入れ替える白内障手術が必要となります。

  • 正常水晶体
  • 白内障
    (混濁した水晶体)

多焦点眼内レンズってなに?WHAT

多焦点眼内レンズは、従来の単焦点眼内レンズと異なり、複数の距離に焦点があわせることができる眼内レンズです。メガネなしで、遠方だけでなく中間や手元などがみやすくなるように設計されたレンズです。近年では様々なタイプの高性能な多焦点眼内レンズが開発され、ご自身のお仕事や生活スタイルにあわせた多焦点眼内レンズを選択することが可能になりました。多焦点眼内レンズは、なるべくメガネを使わず、日常生活を快適に過ごしたい方にお勧めのプレミアム眼内レンズです。

様々な多焦点眼内レンズ

多焦点眼内レンズを用いた
白内障手術の特徴 FEATURE

多焦点レンズの最大のメリットは、遠くや中間、近くなど、メガネなしで複数の距離がみやすくなることです。(多焦点レンズの種類により、それぞれ見やすい距離は異なります)
人の水晶体は、若い時には伸縮性に富んでおり、みる距離にあわせて形を変え、ピントを連続的にオートフォーカスで合わせることができます。

一方、多焦点眼内レンズは複数の距離にピントをあわせることができますが、人の水晶体のように自らが伸び縮みしてピントを合わせるわけではありません。目に入る光を遠くや近くに分け、一つの光を複数に分散することで、さまざまな距離にピントがあうように設計されています。
このため、多焦点レンズの種類により、遠方+近方、遠方+中間などの2焦点レンズ、遠方+中間+近方の3焦点レンズなど、ピントがあう距離や数が異なります。

また多焦点眼内レンズは、光を分散させることで複数の焦点を作り出す構造上、ハロー・グレアといった症状がみられます。ハローは暗いところで明るいライトなどを見た時に光の周りににじんだ輪が見える現象であり、グレアは対向車のライトなどがギラギラと光って眩しくなる症状です。症状の度合いや期間には個人差がありますが、治療後数ヶ月でそれほど気にならなくなることが一般的です。

多焦点眼内レンズは近年目覚ましい進歩を遂げており、QOV(quality of vision)の改善に大きく貢献しています。
しかし健康な人の水晶体と同様の調節力を持った、理想的な眼内レンズは現時点ではありません。年齢、性別はもとより、仕事や趣味など、個人によってその生活様式は千差万別であり、手術を受けられる方の目の状態もそれぞれ異なっています。すべての方に多焦点眼内レンズがお勧めできるわけではなく、レンズを選択するための事前マッチングをしっかりおこなうことが重要です。

  • ハロー、グレアなし
  • ハロー、グレアあり

このため、白内障手術を受けられる方は、生活スタイルや術後に希望する見え方など、自分にとってどの眼内レンズが一番適しているか、治療前に担当の医師やスタッフとよく相談することをお勧めいたします。

当院では、手術前に詳細な術前検査をおこない、患者様の見え方のご希望をよくお聞きした上で、眼内レンズのマッチングをおこなっています。
患者様が多焦点眼内レンズでの手術をご希望された場合でも、術前検査の結果や医師の診察により、最終的に多焦点眼内レンズが向いていないと判断した際は、単焦点眼内レンズでの手術をお勧めする場合があります。

多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズの違いCOMPARISON

単焦点眼内レンズ

単焦点眼内レンズの見え方イメージ

単焦点眼内レンズは、遠くや近くのある1点の距離のみに焦点があうレンズです。例えば、遠くに焦点をあわせた単焦点眼内レンズを入れた場合、遠くの景色やテレビなどはよく見えますが、本や携帯電話などの近くをみるときは、メガネが必要になります。
逆に近くに焦点をあわせた眼内レンズを入れた場合は、遠くをみるときはメガネが必要になります。

多焦点眼内レンズ

多焦点眼内レンズの見え方イメージ

多焦点眼内レンズは、遠くや中間、手元などの複数の距離に焦点が合うレンズです。レンズの種類にもよりますが、遠くの景色やテレビがみえることに加えて、スーパーの値札やパソコンなどの中間距離、本や新聞・携帯電話などの近距離がメガネ無しでみえやすくなります。このため単焦点レンズにくらべてメガネをつかう頻度を大きく減らすことができることが最大のメリットです。
多焦点眼内レンズのデメリットとしては、夜に街灯などをみたときに光の周りにリングが見えるハロー、夜間の運転時などに対向車のライトなどがギラギラ光ってみえるグレアといった症状があります。
また多焦点眼内レンズでは、色の濃淡であるコントラストがやや低下しますが、通常気になるほどの低下はありません。
ハロー・グレアの程度は、多焦点眼内レンズの種類により異なりますが、術後初期に出やすく、時間とともに少なくなってきます。
夜間の運転が多い方や職業運転手の方、非常に細かいものをみるお仕事などをされている方などでは、単焦点眼内レンズが向いている場合もありますので、事前にスタッフまたは担当医にご相談ください。

多焦点眼内レンズ

メリット

  • 遠くや近くの両方が見やすくなる
  • レンズにより複数の距離もみえる
  • メガネ使用頻度がかなり減る

デメリット

  • 費用が高い(選定療養、自由診療)
  • 暗所でハロー、グレアがやや生じる
  • コントラストがわずかに低下
単焦点眼内レンズ

メリット

  • 遠くや近くのみの1か所はみやすい
  • 費用が安い
  • コントラスト良好

デメリット

  • 見えにくい距離はメガネ必須

当院で選択可能な多焦点眼内レンズ FACILITIES

以前は2焦点の多焦点眼内レンズが主流でしたが、近年は焦点の合う幅を広くした焦点深度拡張型や3焦点、連続焦点型などの最新設計の眼内レンズが登場しています。患者様のライフスタイルにあわせた最適なレンズをお勧めいたします。
当院で採用している多焦点眼内レンズは以下となります。

多焦点眼内レンズ

  • テクニスマルチ 2焦点

    遠方および近方(40cm程度)にピントがあう2焦点レンズであり、ハロー・グレアはやや多めです。乱視のある方には適応外ですが、コストパフォーマンスに優れています。

  • アクテイブフォーカス 2焦点

    遠方〜中間にピントがあう2焦点レンズです。遠方重視で設計されているため、夜間のハロー・グレアは少ない特徴がありますが、近方はみえにくくなります。

  • シンフォニー 焦点深度拡張型、乱視対応

    遠方〜中間(50cm程度)まで連続してピントがあうように焦点深度を拡張したレンズです。近方はやや弱く、ハロー・グレアがややありますが、コントラストは良好です。

  • パンオプティクス 3焦点、乱視対応

    遠方、中間、近方(40cm程度)の3焦点にピントがあうレンズです。ハロー・グレアは比較的少なめですが、コントラストがやや低下するため、暗い所ではややみえにくくなります。

  • シナジー 連続焦点型、乱視対応

    2021年に発売の最新の多焦点レンズであり、遠方〜中間〜近方(30〜35cm程度)まで連続して見やすくなるレンズです。ハロー・グレアはやや多めですが、コントラストや近方視力も良好です。

多焦点眼内レンズの費用
選定療養実施施設 COST

当院は厚生省の多焦点眼内レンズの選定療養実施施設であり、国内での使用が正式承認されている多焦点眼内レンズを採用しております。
2020年4月1日より、国内で承認されている多焦点眼内レンズはすべて選定療養の対象となります。手術代金部分は保険診療となり、多焦点眼内レンズ代は別途自己負担となります。

多焦点眼内レンズの料金 自己負担

レンズ代金(片眼) 税込 18万〜34万
  • ※上記レンズ代+手術代金(保険診療)が手術費用となります。